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クロ僕屋

(承前)
私は「そこに行けば(電子関連は)なんでも見つかる」と思っていた。夢の電脳都市秋葉原。それは上代の日本人が唐に理想郷を見たように、断片的な伝聞から戯画的に誇張された思い込みであったが、それに縋る他はなかった。故障したコンデンサーの隣には恐らく同型と思われる円筒形が立っている。それにはなにやら性能を示す謎の数値と単位記号らしきものが書いてある。それは私にとって古代文字と同じであったが、意味のわからないまま丸写ししたメモを持って家を出た。私は東京の外れの大学に電車で通っていた。秋葉原には寄り道したことが何度かあった。しかしこの時点ではそれはもう何年も前のことであった。生来の方向音痴である私は路線検索の助けを借りねば電車で目的地に辿り着くことはできない。しかしPCが故障しネットが封じられている以上、あの日寄り道した記憶を頼りに行くしかない。東京砂漠にわたしは足を踏み出す……(続く)

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